安倍政権を支える「ネット世論」の害悪。
宮崎謙介、武藤貴也、上西小百合…
なぜ公募議員はクズが多いのか?
人材不足の最たる分野が「政治家」だった。
作家・哲学者の適菜収が「安倍政権の無能と欺瞞」を討つ批判の毒矢
こうした流れに拍車をかけたのが小泉政権だろう。
二〇〇五年、郵政民営化関連法案が参議院で否決されると、小泉は「郵政民営化に賛成してくれるのか、反対するのか、これをはっきりと国民の皆さまに問いたい」と言い、衆議院を解散した。職業政治家の判断を無視し、素人の意見である世論に判断を委ねたのだ。
小泉は、反対派の議員に「抵抗勢力」とレッテルを貼り、公認を拒み、即席の公募で集めた候補者を「刺客」として選挙区に送り込んだ。
小泉は「自民党をぶっ壊す」と息巻いたが、自民党と一緒に議会主義も良識もすべてをぶっ壊したのである。
逆に言えば、この二〇年にわたる改革の乱痴気騒ぎにより、政党は国民の声をくみ上げるシステムを見失ってしまった。彼らは自らの役割を放棄し、ついには発狂してネット世論に飛びついた。政治がもっとも警戒しなければならないのは、顔が見えない世界であるにもかかわらず。
ネットはデマやプロパガンダの温床であり、悪意に火をつけるのは簡単だ。さらには架空の敵をでっち上げることも容易にできる。
問題は現在進行中の「新しい形の大衆扇動」が何を生み出すかだ。
政令指定都市である大阪市が住民投票により解体直前まで追い込まれたのは記憶に新しい。思考停止した社会はナチズムやスターリニズムに行き着いたが、二一世紀においては、ネット世論から悲劇が発生するかもしれない。
(※話題のベストセラー『安倍でもわかる政治思想入門』本文一部抜粋)
著者略歴
適菜 収(てきな・おさむ)
1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチ・クリスト』を現代語訳にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(以上、講談社)、『死ぬ前に後悔しない読書術』(KKベストセラーズ)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)など著書多数。安倍晋三の正体を暴いた渾身の最新刊『安倍でもわかる政治思想入門』(KKベストセラーズ)が発売即重版。全国書店、Amazonにて好評発売中。